黒猫とパンツと自由間接話法

よくわかる現代魔法ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ(著:桜坂洋/画:宮下未紀)*1応援強化月間も本日が最終日です。
この1箇月、感想サイトを収集したり、立花隆の本*2を読んだりしたことで、この小説について色々思うところがありました。そこで、これまでに考えたことをちょっとまとめてみました。
ネタバレを含みます。十分にご注意を。

解読「よくわかる現代魔法」

この稿は、桜坂洋の「よくわかる現代魔法ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ」(以下「GFW」)に関して書いた文章からなっている。
私がなぜこの小説に関して、以下のようにしつこく語るかというと、この小説が、私の読書史上最も特異的に面白い作品だと思っているからなのである。
この小説は、読者に挑戦するかのような重層構造になっている。あ、この小説はこういう小説か、とあるとき深くわかったつもりでも、そのうちさらに深いレベルがあることに気付かされて、あ、自分は何もわかっちゃいなかったと思わされたりする。
これを単なるエンタテインメント小説として楽しめればそれでいいという考え方もあるだろう。しかしそれは、「コッポラの『地獄の黙示録*1なんてアクション映画だよ」というのと同レベルのものの見方でしかないといっておきたい。
この巻だけ1回しか読んでいない人に対しても、シリーズを何回も読んだ人に対しても、この小説について語りたい気持ちでいっぱいにさせたい、というのが本稿の目的である。

I 「GFW」第一文の衝撃

この第一文は、私にとって、特別に衝撃的な文章である。

 一ノ瀬弓子クリスティーナはパンツをはいていない。(10頁)

一方で、作者は本作のテーマとして「友達」をあげている。たとえばこの後書。

「夏休みの宿題は、夏休みの最後に、友達と一緒に楽しくやれ」
 だから、今回の話は、そういう話だ。(223頁)

だから、衝撃的な第一文も「友達」と大きく関わっているはずだ。

この稿は主として、「GFW」で一番扱いが難しいパンツの部分を論じたものである。ここでは、作者がこの小説を執筆するにあたって、下敷きにしたと思われる各種の理論や作品をなどを手がかりに、作者が込めていたメッセージを読み解いていきたい。
この稿を「深読みのしすぎ」などといって批判する人もいるだろうが、「GFW」のエンディングまでの骨格は、以下のように読めば、ますます鮮明に浮かびあがると思うのである。

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