文学少女と慟哭の巡礼者

心通わせたはずの美羽が自殺未遂で姿を消し、《井上ミウ》としては小説を書けなくなった心葉のトラウマも、本を食べちゃう文学少女 遠子のおかげで解消したかに見え、ななせとの仲も急接近だが、その美羽が現れて――ほんとうのさいわい学園ミステリー。
銀河鉄道の夜(宮沢賢治) *2のジョバンニとカムパネルラの二人には、どこかBLちっくな香りがします。二人を巡る《一緒のままではいられない、いつか別れがやってくる》ストーリー展開は、雨月物語(上田秋成) *3の「菊花の約」的なところがあるし。
心葉と芥川がそういう関係に見えないのは、芥川の「心葉のためを思って○○を隠してやる」という態度にあるような。心配をかけるといけないからという理由で何かを秘密にする、っていうのは、ちょっと違うような気がします。隠微(淫靡)な関係は二人で秘密を共有するからこそじゃないかしら。
心葉と美羽の関係をジョバンニとカムパネルラに対応付け、私と一緒をとるか私以外の世界をとるか究極の選択が迫られるヤンデレ展開の本作ですが、シリーズ全体を通して見ると、実はカムパネルラは、心葉の秘密を知っている遠子先輩なのかもしれません。次巻ではその謎が明かされそうな予感。

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