雨恋

雨の日に限って猫が見つめる中空から「わたしは幽霊です」という千波の声を聞いた渉は、自殺ではなく殺されたと主張する彼女のために、真相を探ることになるが――声はすれども姿は見えずラブストーリー。
時を隔てて同じ部屋の留守居をすることになった千波と渉ですが、彼女が地縛霊状態なせいもあって、押し掛け女房型の状況。それまで一人暮しだった彼らにとって、テレビを見ながらくだらない感想を言い合うだけでもどこか嬉しい、そういう《半同棲生活》の楽しさが伝わってきます。
姿が見えず触れることもできない幽霊が相手だと、食事の趣味や家事の分担といった擦り合わせが必要な事項がないので、より一層リラックスして過ごせるのかもしれません。
彼女の骨だけ見えるねくろま。(平坂読) *2同様、相手の顔も体も見えないというのは、性欲にとらわれない関係を築くことができる、という意味で重要かも。事実が明らかになるごとに、千波の姿が変化し、二人の関係も微妙に変わっていく展開の妙が光ります。
幽霊と人の恋を生まれ変わりで成就させるハッピーエンドのトリツキくん(高田祐三) *3や1+1=0(桑田乃梨子) *4では、霊の存在と生まれ変わりの2つの設定が導入されてますが、本作で導入されるのは、前者だけ。自ずと決まってくるラストも、《千波の姿》が生かされていて、画像・映像作品でない良さを感じます。お薦め。

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