ロミオの災難

著:来楽零 画:さくや朔日 電撃文庫*1

オヤジ美人の雛田、舞台では大胆な新堂、クールな村上の女3名、綺麗メ西園寺に裏方にまわりたい如月の男2名、演劇部の恋模様はロミジュリ翻案脚本に込められた想いに突き動かされて――演じる者と演じられる者と演じさせる者の相克恋愛劇。
劇中劇の二重構造のみならず、登場人物を演じる役者とその役者にある役柄を演じさせようとする《想い》の二重構造が光ります。ドキドキしているから好きなのか、好きだからドキドキするのか、この《想い》は果たして自分の《想い》なのか、演劇的視点から見たキャラクターとプレイヤーの重ね合わせが見事。
ロミオとジュリエット』ほかシェークスピアの有名処の引用もピタリピタリと嵌っていて、単なる蘊蓄の嫌味な開陳になっていないところもいい。飜訳は作者が自分でやったのかな?
自分以外の誰かが自分を演じようとする設定はホラー的ともいえるんですが、『六番目の小夜子』(恩田陸) *2との大きな違いは、劇中劇がきちんと完結している点。そのためもあってか、怖さよりもサスペンス的なテンポの良さや構成の美しさが目立ちます。お薦め。

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