少女ノイズ

殺人事件の犯行現場に《縁》がある僕は、心理学者 梨夏の紹介で個別指導がウリの進学塾の優等生問題児 瞑の面倒を見ることになるが――静かな世界が真相を洞察するノイズキャンセル連作ミステリ。
猟奇犯罪研究室に予備校の屋上でヘッドホンをかける美少女にこの題名から、電波を集める瑠璃子さん/『雫−しずく−*2のような展開かと一瞬思いましたが、プラグが抜かれたままとの描写で、QuietComfort 2系かと合点がいきました。瞑の感性は、むしろ、この世の音をゲーム効果音のように感じる悦郎/『スラムオンライン』(桜坂洋) *3のに近いかも。
殺人事件の真相を次々と見抜く頭の良さがありながら、両親と自分の関係では、優等生と問題児の二つの姿をとってしまう彼女。彼女の洞察力からすれば、そうしても無駄なことは読み取れるだろうに、それでもそうせざるを得ない立場、そういう立場を知らずに近付いた《僕》。瞑に惹かれる《僕》、《僕》に心を許す瞑の二人の関係を見ていると、相手の背景や立場を知らずに二人の距離が近付くことが重要なんだな、と思わされます。逆に喩えれば、好きな作家にファンが近付いていっても、対等の友情や愛情を育むことは難しい、ってことなのかも。
クールで断定的な瞑の時折見せる弱気な子供っぽさが魅力的。『SHI-NO ―シノ― 黒き魂の少女』(上月雨音) *4系のミステリ分が好きな方にお薦め。

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