五つの鍵の物語

著:太田忠司 画:フジワラ ヨウコウ 講談社ノベルス*1

編集者の紹介で訪れた《五つの鍵の博物館》でスランプに陥っている作家の私を迎えたのは、謎めいた少年と少女と5枚の鍵の絵――鍵をめぐる全五篇の幻想譚。
自分の名前と同じ数字の鍵を持たされて連なる小部屋に閉じ込められた人々の脱出劇「黒曜の鍵」では、『CUBE』(ヴィンチェンゾ・ナタリ) *2や「雪山症候群」/『涼宮ハルヒの暴走』(谷川流) *3オイラーの多面体定理や素因数分解を参照するのと同様、数学の何をテーマにするのか、が見処なんですが、他の人は床に寝ていたのに、一人だけ一段高いソファに寝ていたことが伏線になっているのが面白い。
鍵を解く過程を真正面からテーマにした魔法鍵師カルナの冒険(月見草平) *4とは異なり、鍵や錠や扉に囚われることがテーマになっている雰囲気。何が鍵で何が錠か、だけではなくて、そのために開く扉は何か、扉の向こうには何があるのか、の暗喩の5つのバリエーションといった感じ。
鍵と錠が男同士に割り当てられることが多いのには、ちょっと予想と違ってましたが、これはこれで隠微に淫靡。

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