よくわかる現代魔法が256倍よくわかる本

いちめんのもりした いちめんのもりした たらいのおちるおと いちめんのもりした

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はいてない談議に花を咲かせる漫画版のこよみ、誰が好きか開陳し合うアニメ版のこよみ、そして、アミュレットを失った美鎖の傍にいる小説版のこよみ。別の時空にいる三人のこよみが一箇所に集まったとき、この宇宙の秘密が――書き下ろし短篇「夏のスプライト」を含む 著者絵師大爆走の256倍よくわかる本。
アニメ化をメタ的なネタにした『偽物語』(西尾維新) *2 *3とは対照的に、短篇「夏の〜」は、マルチメディア展開をSF的な多世界解釈に絡め、『よくわかる現代魔法』のストーリーとして回収することに成功しています。今回の美鎖は並行世界の無限濃度を悪用していて、整数の「総数」と、整数の一部でしかない偶数の「総数」は、いずれも同じℵ0個と知ったときの驚きを思い出しました。
そして、この宇宙におけるこよみの《無限のあり方》を問う壮大なスケールのクライマックス。そんな場面でも、嘉穂の語りはいつも通り淡々としています。腕を伸ばす嘉穂は、ブラックホールの周りの重力ベクトル分布みたいで、その台詞は、裸の特異点とか、毛がないとかの、一般相対性理論用語と共通する脱力系秀逸さ。このギャップが超好み。
後書きでは著者自身が色々手を出した、とありますが、嘘構造化BASICでコードを解説する「現代魔法でわかる楽々詠唱呪文基礎講座」も確かに小ネタ満載で、ウェブ版の現代魔法講座エイプリルフール企画に通じるものがあります。わからなければわからないでいい、では済まされない。お薦め。

恒例

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