よいこの君主論

もし小学生がマキャベリの『君主論』を読んだら
著:架神恭介+辰巳一世 画:川奈梶馬 ちくま文庫*1

時は戦国、クラス変え直後の混沌とした5年3組に覇を唱えんと、諸侯列強の小学生が智謀の限りを尽くす――帝王学を垣間見る反教養ストーリー。
かつて目立小学校5年3組で発生した戦国絵巻を、『君主論』(マキャベリ) *2を引用しつつ、ふくろう先生がたろうとはなこに解説する、という構成。
戦国絵巻の主人公は、ひろし。用兵には定評があるものの、学業運動の成績がぱっとしない彼が父の部屋で『君主論』を見つけたことがきっかけで、という設定なんですが、『君主論』の内容の重点は、たろうとはなこの解説の方に移動しています。
ある論を《実践》する立場で書かれた『もし高校野球のマネージャーがドラッガーのマネジメントを読んだら』(岩崎夏海) *3よりは、ある論を《解説》に使う視点の『女子大生会計士の事件簿』(山田真哉) *4に近い感じ。
そのせいなのか。クライマックスで原本を逸脱する『もし〜』とは異なり、基本的には『君主論』に沿ってストーリーが展開されます。
ひろしの最大の敵、女帝りょうこのクライマックス第23章「運命に打ち勝つには」は、《感動的》な見た目と、顕に見える《権謀術数》のギャップがたまらない。お薦め。

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