本屋の彼女が好きな本 - 本屋大賞2007分析(1)
書店員が選んだいちばん!売りたい本を選ぶ本屋大賞*2。2007年は、一瞬の風になれ(佐藤多佳子)が受賞しました。第136回直木賞候補、第28回吉川英治文学新人賞ですから、順当過ぎる結果といえるかもしれません。
本屋大賞では、国内小説を自由投票で1次選考した後、上位10作の中から投票する2次選考を行います。上位10位について、支持者の男女比や年齢比が公表されています。
支持者の男女比
ここでは、候補作の支持男女比に注目してみました。結果は、こんな風になってます。
風が強く吹いている(三浦しをん) | 男37% 女63% |
♥ 名もなき毒(宮部みゆき) | 男37% 女63% |
♥ ミーナの行進(小川洋子) | 男38% 女62% |
♥ 終末のフール(伊坂幸太郎) | 男42% 女58% |
図書館戦争(有川浩) | 男43% 女57% |
○ 夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦) | 男47% 女53% |
◎ 一瞬の風になれ(佐藤多佳子) | 男48% 女52% |
♥ 陰日向に咲く(劇団ひとり) | 男54% 女46% |
鴨川ホルモー(万城目学) | 男56% 女44% |
失われた町(三崎亜記) | 男57% 女43% |
男女支持比では明確にグループ分けができたんですが、年齢層支持比では、なだらかに支持率が変化していて、どこがグループの切れ目、ということもなさそうな感じです。
もっとも、この結果を見ると、大賞 一瞬の風になれ(佐藤多佳子)を支持しているのは壮老層であり、2位 夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦)を支持しているのは圧倒的に若青層であることがわかります。
一瞬の〜作品傾向は、一種の青春時代ノスタルジー小説、夜は〜の作品傾向は、身近なようでいて実はあまりない若い恋に憧れるファンタジー小説、と見ることもできますから、この支持層の差には頷けるものがあります。
それにつけても、鴨川ホルモー(万城目学)と失われた町(三崎亜記)の荘老支持には突出したものを感じますね。
鴨川ホルモーに消えゆく町と官僚組織の失われた町の第4グループ。
現実寄りが女子支持、幻想寄りが男子支持、とまとめることもできそうです。
大賞1位◎ 一瞬の〜と2位○ 夜は〜は、表の真ん中あたりの第3グループ。男女の支持を万遍なく集めたことも、上位になった一つの要因なのでは、と思わせます。
ダ・ヴィンチ読者が好きな本
本好きに愛された本を選ぶダ・ヴィンチ*3 BOOK OF THE YEAR 2006はジャンル不問の投票で、上位31作が発表されています。一位はハリー・ポッターと謎のプリンス(J・K・ローリング)でした。
本屋大賞の上位31作と、ダ・ヴィンチの上位31作で重なっているのは、陰日向に咲く(劇団ひとり)、名もなき毒(宮部みゆき)、赤い指(東野圭吾)、チョコレートコスモス(恩田陸)、終末のフール(伊坂幸太郎)、チーム・バチスタの栄光(海堂尊)、ミーナの行進(小川洋子)の7作。表中では♥を付けています。
これを見れば、「本屋が売りたい本」と「読者が読んで良かった本」の温度差がわかります。
ダ・ヴィンチの上位には、まほろ駅前多田便利軒(三浦しをん)が入ってます。これを考慮すると、第1グループと♥はほぼ一致。ダ・ヴィンチ読者にはやっぱり女性が多いのかも、なんて傾向が見てとれます。
彼女彼氏と話を合わせるには?
本屋大賞ノミネート作の10(+2)冊を今から読むのは大変だし、書店で働く本好きの女子男子と話題を合わせたいなら、どれを読むべきか。
余裕があるなら、2つのランキングで上位に絡む♥の4作、劇団ひとり、宮部みゆき、伊坂幸太郎、小川洋子。
後先考えず、一点集中主義でいく場合、目当てが女子なら三浦しをん、男子が気になるなら三崎亜記、ということになりそうです。奇しくも「三」が揃う結果となりました。
→本屋大賞2007分析(2)
→本屋大賞2007分析(3)
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