美晴さんランナウェイ

定職もなく男を見る目もなく27歳になった美人の叔母 美晴さんが引き起こすトラブルに巻き込まれる世宇子(ようこ)一家だが――実家にいたはずがいつの間にやら居候ストーリー。
目の前にある問題からひとまず進んで逃げる美晴さんの姿に、何故か 逃走論―スキゾ・キッズの冒険(浅田彰) *2を思い出したり。昭和は遠くなりにけり。
世宇子の祖母=美晴の母が亡くなったエピソードを綴る第1話「三中だけセーラー服」では、セーラー服の仕立てのシーンで美晴と世宇子を時を超えて比較することで、オチをしっかりと暗示しています。歳をとるごとに誰が誰がわからなくなっていく祖母に対する周りの気の使い方と子供の気の使わなさ加減が自分の個人的な経験にちょっと重なりました。学生服で葬式に出席した経験はないんですが。
「世宇子」という名前も壮大ですが、彼女の憧れの従兄の名前も「自由(ジュウ兄さん)」と拮抗。これらに比べると弟の名前「翔」は、ちょっと貧相。気の小さいムー系少年との設定に良く合ってました。
古本屋のアルバイトをする美晴さんですが、近所の人との近さが似ている 夕子ちゃんの自転車(長嶋有) *3でも、古道具屋が舞台装置として登場してました。読者をホロリとさせるストーリー展開は、古びているけどまだまだ使えるという点で、この舞台装置との相性も抜群でした。

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