この指とまれ GONBEN

著:小川勝己 画:ミルヨウコ 実業之日本社*1

夏子をリーダーに結成された大学生詐欺グループの今日のカモは、若者に説教したいサラリーマン――最後に騙されるのはいつも覚悟がない奴 青春クライムサスペンス。
法律の抜け穴を巧みに突く東大卒の詐欺師伝『白昼の死角』(高木彬光) *2は勝ち組から金を掠めとる雰囲気ですが、負け組人生からの逆転を狙う本作は、負け組が他の負け組から搾取する展開が結構あります。現実に行われているであろう数々のやり口には、スカっと爽やかというよりはジメっと細やか。
ドラ息子を病院の理事長に据えたい政治屋が相手の第三章は、騙し騙されのコンゲーム的な風合いで、犯罪者を主人公にしているにもかかわず不思議なファンタジー的爽快感がありますが、それ以外の章はもっと現実的で貧乏臭くて、騙す方も騙される方も、誰も彼もが結局は全員地獄行き。
ナニワ金融道』(青木雄二) *3に喩えていえば、灰原が大学生でマチ金を騙したりヤクザに追われたり、みたいな感じ。今のままの平穏無事な生活で十分幸せ、と思いたいときに適した一冊です。

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