旧宮殿にて 15世紀末、ミラノ、レオナルドの愉悦

著:三雲岳斗 写:CHIEKO AOYAMA 光文社文庫*1

リュート奏者クラリーチェから同じくリュート奏者のキアーラへ乗り換えたガッフーリオの家から新しい愛人の肖像画が消えた事件について、宰相ルドヴィコと才媛チェチリアから相談を受けたレオナルドは――「愛だけが思いださせる」を含むダ・ヴィンチの15世紀末名推理短篇集。
古色蒼然とした城を舞台に天使が殺した奇蹟の磔の前作『聖遺の天使』(三雲岳斗) *2読んでからもう1年以上、読もう読もうと思っているうちに、嬉しいことに文庫化されました。短篇集なせいか、前作に比べてちょっと事件が地味目ですが、助手役チチェリアがきっちり賢く事件を整理する等、数々の活躍を見せる展開は健在。
才媛が登場する『ミミズクとオリーブ』(芦原すなお) *3では、頼りない助手がぼく、探偵が妻で、本作とは赴きが違います。レオナルドに対するチチェリアの関係は、明智小五郎に対する『少年探偵団』(江戸川乱歩) *4の《美少女》助手小林や『円紫さん』(北村薫) *5に対する《女子大生》のわたしを成長させた感じかも。
賢いけど控え目で気がきく才媛に目がない方にお薦め。

><