時載りリンネ! 3 ささやきのクローゼット

ねえ、ネリー。わたしはここにいるよ。

晴れて時砕きと認められたリンネは、ドアノブ《時の把手》の行き先は時の進みが違うことに気付き、彼の地で自由時間を満喫するが、少女ネリーと出会い――時を歪ませるどこでもドアのわくわく冒険物語。
活字を読むこと、時間を操ること、一見無関係なこの二つを結び付けるのは、本を読むのが嫌いで時間を忘れて冒険にいそしむ小学生リンネ。彼女の冒険を綴る《僕》こと久高の語彙が、とても小学生に見えないところがご愛敬です。
今巻は、一日が30時間あったらいいのに!という切実な願いをかなえてくれる魔法のドアノブが登場。こちらの1分は行き先の25分の逆ウラシマな設定の下、行き先で友達ネリーと出会い、と、『ある日、爆弾がおちてきて』(古橋秀行) *2に登場しそうな状況なんですが、「恋」ではなく「友情」で攻めるところがいいですね。
帯のアオリは「活字中毒少女No.1!」。ネリーと話題を合わせるためにリンネが本を読み始めるシーンは、本が主食から嗜好品へと変化していく過程なのかしら。まだ「中毒」には至っていないようですが、小説の味にはやたらとうるさい『文学少女シリーズ』(野村美月) *3の遠子先輩のように、特定の活字に《偏食》が進むのかもしれません。

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