文学少女と月下を孕く水妖

遠子からの突然の呼び出しに、麻貴の別荘で夏休みを過ごすことになった心葉は、80年前の惨劇と今夏の状況との類似性に誰かの意図を感じて――文学少女のリリカルな文学蘊蓄サスペンス。
遠子先輩が読書欲と食欲をごちゃまぜにして紹介する本シリーズ、今巻の注目作は泉鏡花の『夜叉ヶ池』*2『外科室』*3草迷宮*4。今までの注目作は、太宰治エミリー・ブロンテ武者小路実篤ガストン・ルルー宮沢賢治と、内国外国が交互に来ていたので、次は外国かな、と思ってたんですが、別段そんな規則はなかった模様。
もっとも、80年前の海外留学が絡む今巻の展開と謎の真相には、『時宗』(高橋克彦) *5や『成吉思汗の秘密』(高木彬光) *6的な豪快さがあって、番外編なせいもあってか、前巻までとはちょっと違った雰囲気を感じました。
「鏡に映る花、水に浮かぶ月」への言及で、遠子と心葉の今後がこれだけ強く暗示されている中、一体どう決着をつけるのか、次巻が楽しみ。

2008年本屋大賞ノミネート作品を見て

いわゆる文学賞とは違った視点で、書店員が売りたい本を選ぶ本屋大賞。予想は一応本命『ゴールデンスランバー』(伊坂幸太郎) *1、対抗『サクリファイス』(近藤史恵) *2、大穴『有頂天家族』(森見登美彦) *3

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