魔法遣いに大切なこと3 夢色に染まる秋天の下で

yomimaru2004-09-03

夏休み。魔法遣いの研修試験に合格した高校三年生、菊池ユメ。
本作は、魔法を取り上げることが必然ではない、というのが特徴ですね。たとえば医学におきかえれば「医者に大切なこと」にしても良いし、文学におきかえれば「小説家に大切なこと」にしても良い。普遍的なテーマ「○○は本当にみんなの役に立つのか? 私は○○者になっていいのか? どんな○○者になればいいのか?」にきちんと取り組んでいます。つまり、今風のビルドゥングスロマン、といった感じです。君たちはどう生きるか(吉野源三郎)*2みたいな。
もちろん、高校三年生という不安定な心、体、身分で、職業とか進路とか恋愛とか、大切なものがぐちゃぐちゃにまざって悩む様が「リアル」になるのは、ジャンルが魔法遣いだからこそ。「医師免許を持つ高校三年生が将来に悩む」よりも、「魔法遣い免許を持つ高校三年生が将来に悩む」方がリアルに感じませんか。
本巻でひとまずシリーズ完、というのが実に残念。