SFファンダム度チェック / SFが読みたい! 2006年版

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ベストSF 2005の発表に上位作家インタビュー、「次世代型作家トークセッション『リアル・フィクション』とは何か?」(桜坂洋×桜庭一樹×新城カズマ)が目玉の本書。
SF界で活躍する作家評論家翻訳家(SFファンダム, FD)によるベストSF 2005(p.4-15)の上位20作と、SFマガジン読者(一般読者, RD)が選ぶベストSF 2005(p.35)の上位10作を見比べていると、同じような作品が上位に入っているものの、どことなく温度差があります。そこで、このラノ占いと同じ手法で分析してみよう、と思い付きました。やり方は恒例の割り算による手法。

SFファンダム値 = SFファンダム得点 / 一般読者得点

一般読者が選ぶ10作のうち、SFファンダムが選ぶ20作に入っているものの最下位は15位の空獏(北野勇作) *2。そこで、一般読者の10作とSFファンダムの15作を分析対象とします。
一般読者10位の得点は23点なので、一般読者得点が不明なものは1点〜22点と仮定して、範囲を見やすく整理してみました。

作品SFファンダム値FDRD
現代SF 1500冊104 - 4.7             104-
空の中 72 - 3.3          72-
四畳半神話体系  70 - 3.2         70-
ベルカ、吠えないのか?   56 - 2.5       56-
バースト・ゾーン 爆裂地区    51 - 2.3     51-
デカルトの密室     5.7               25745
シャングリ・ラ      5.4              19336
ハイドゥナン        3.8            16543
老ヴォールの惑星         3.7           30583
パンドラ            2.8        9133
神狩り2 リッパー              2.5      8032
空獏                2.1    4923
サマー/タイム/トラベラー                 1.7   11267
All You Need Is Kill                  0.9  5259
ブルースカイ                   0.7 1523
スラムオンライン                    0.61524

表中、  の帯は、一般読者の10作に入っていない作品、  の帯は、両方に入っている作品です。左にあればSFファンダム寄り、右にあれば一般読者寄りで、その境界は、75/23 = 3.26 です。

この分布を見ていると、ベスト作品の中でも、SFファンダムの評価と一般読者の評価が分かれているような印象を受けます。リアル・フィクションという新しい波に、SFファンダムが乗り切れていないのかも。
名作の復刊で売行が伸びていると言われるSFですが、復刊古典も新傾向も同じ視点で新鮮に読むことができる新規読者が増えているのかもしれません。
SFが さらに支持を集めるようになるのか、かたい本好きSFファンダムとリアル・フィクション好きの一般読者の間でどのように舵取りをしていくのか、SF界の動向に注目したいと思います。

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