人を殺す、という仕事

著:大石圭 写:Nikolaevish/photonica amanaimages 光文社文庫*1

見知らぬ《C》の指示に従ったことで飛行機事故を免れ、その命令を信頼するようになった僕に、少女を殺さなければ母が死ぬ、との新しい命令が――僕は石になりたかったはずなのに、暗黒ホラー小説
たとえば、『交換殺人には向かない夜』(東川篤哉) *2のように、殺してあげるかわりに殺せ、という契約はある種の等価交換のように見えますが、一方が役目を果たしてから他方が役目を果たすまでの間に利子が嵩むのが常道で、ちょうどトイチで金を借りるのと同じ。
一方本作は、勝手に金を振り込んでおきながら返済遅延金を要求する押し貸しに相当する感じ。人を殺す代償が身内が殺されないことで、自分をごまかす言い訳がしやすく、そのごまかしが僕の中の黒いモノを生じさせてしまうところが悪質。
ミステリーやサスペンスとホラーを比べると、話にオチがついたときに説明し切れない何かがどれだけ残っているかが違うんだな、と実感させられました。

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