フリーランチの時代

人を落とす鍵は、食欲・性欲・知識欲

平均寿命が1年に1歳伸びるようになり、健康であることが半ば義務とされる世界で、厚生勤労省の職員 羽島は法定延命措置を拒否する眉子を追うが――生きるべきか死ぬべきか「千歳の坂も」を含むSF短篇集。
遺伝子によって人を区別する未来が描かれる『ガタカ*2とは異なり、「千歳の〜」は、ありとあらゆる人が、延命措置によって不老不死となった社会をテーマ。役人を主人公に据えたせいか、貧乏臭くも生々しい《現実》をひしひしと感じます。
表題作「フリーランチの時代」における異星人とのファーストコンタクトは、ファーストコンタクトの悲壮な使命感に燃える『そして、星へ行く船』(新井素子) *3とはまるっきり違って、そのあっけなさに呆然。
異星人の目的も、『人形つかい』(ハインライン) *4や「ぼくの地下室においで」/『スは宇宙(スペース)のス』(ブラッドベリ) *5にも見られるような古典的な侵略モノのはずなのに、『さよりなパラレル』(竹本泉) *6的なお気楽極楽方向をさらに推し進めており、女性隊員 三奈と克美のあっけらかんとした態度もあいまって、コメディ感溢れる一篇になっています。
『老ヴォールの惑星』(小川一水) *7に比べて肩に力を入れずに読める感のある一冊。お薦め。

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