月蝕姫のキス

つい「待てよ」と声に出しちゃう悪い癖
著:芦辺拓 画:福井利佐 理論社ミステリーYA!*1

論理的に考え抜かなければ気がすまないやっかいな性格の《ぼく》は、学校近くで起きた殺人事件の真犯人が美人のクラスメイト美羽子だと矛盾が生じないことに気付いてしまい――ぼくが探偵になった理由ミステリー。
『蜘蛛女のキス』(プイグ) *2や『黒蜥蜴』(江戸川乱歩) *3を思い出させる雰囲気のタイトルの本作、ヒロインに男が絡め取られていくところも共通しています。探偵役の《ぼく》暮林少年のオタクくささは、『ぼくらシリーズ』(栗本薫) *4に近い感じ。
本作は、怪盗ではなく、殺人犯・テロリストを探偵が追う展開。怪盗モノだと絶対に露見しない完全犯罪ができるはずなのに自己顕示欲から予告をしてしまうことになるのですが、本作の場合は、なぜテロに至ったかの理由を真犯人が探偵にほのめかす展開。犯人が《自分を理解してくれる人》を求めてしまう感情は、究極的には恋と同じであることがよくわかります。
頭の良い彼女に翻弄されたい方にお薦め。シリーズ化してくれないかしら。

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