探偵小説のためのノスタルジア「木克土」

崇徳の崇の字は祟じゃない

銀山の跡目争いの行方を見定めるため、相続人の一人 枝里とともに獄霊島を訪れるコモ、あかね、夕子、楓。紗幕谷と樽田の2つの旧家の争いに、崇徳院の御製が――黄色い洋菓子妄想ミステリー第3弾。
競技かるたに文字通り命をかけるあかねの今回の敵は、獄霊島の村長。彼と彼女の繰り広げる戦いは、『風の雀吾』(みやぞえ郁夫) *2 *3 *4を彷彿とさせる必殺技の嵐。透過光の嵐の映像が目に浮かびます。
島とのかかわりでは『八つ墓村』(横溝正史) *5を、歌と殺人事件のかかわりでは『獄門島』(横溝正史) *6を、それぞれ踏まえた本作の裏の主人公は、日本最強の怨霊として跋扈する「叔父子」天皇こと崇徳院。その運命と、本作の真相がぴったり重なる結末が見事。
物理トリックと動機モノは嫌い、と豪語する本作は、『逆説の日本史』(井沢元彦) *7と一緒にどうぞ。

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