サマーウォーズ

長野の活イカ、目黒のサンマ
著:岩井恭兵 原:細田守 画:貞本義行 角川文庫*1

帰郷する先輩 夏希の依頼で偽彼氏になった健二は大家族との触れ合いに心踊らせるが、アメリカ帰りの侘助の登場で、夏希と健二の間に微妙な異変が――初心な二人が手をつなぐまでストーリー。
侘助視点で考えると、失踪してしまって親戚の間ではいなかったことになっている男が帰ってくる、と、『父帰る』(菊池寛) *2のストーリー展開ですが、本作ではこれを、第三者的な健次の立場から描いています。
主人公の健二は、擬似乱数からボールペンと紙で元の漸化式を導き出す能力を有する数学の「天才」。4桁の数字の因数分解が瞬時にできることをキーにした『CUBE』(ヴィンチェンゾ・ナタリ) *3より天才度は高いんですが、仮想空間OZのセキュリティはかなり低そう。
侘助と夏希の仲の良さにモヤモヤするあたりなんか、昭和の中学生日記的な「少年」な健二。増長から失意、そして復活の落差があるとアピール度も高いんでしょうが、この落差、侘助の方が圧倒的に大きくて、見せ場を喰われ気味。こんなところも彼の、押しが弱い性格によくマッチしています。映画の方はこれから見る予定。

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