名前探しの放課後

下妻ジャスコにスタバあり
著:辻村深月 画:丹地陽子 講談社*1 *2

同学年の誰かが自殺する3箇月先までの記憶とともにジャスコの屋上に戻ってきたいつかは、同級生のあすなや秀人らと、誰が自殺しそうか調査を始め――ファスト風土*3済みの千葉の田舎サスペンス。
犯した罪に対してどういう罰を与えるかを論理的に追求する展開の『ぼくのメジャースプーン』(辻村深月) *4に対して、本作は、誰がどう動いたら誰がどう動くかを緻密に推論する展開。
誰かの自殺を止めるため、真相を明かさずに周囲でお膳立てする、というやり方は、後で真相を聞かされたらちょっとムっとするところですが、結末では、このやり方と自因自果的な考えがうまく融合しています。
絢乃と別れて鶴田先輩とつき合おうと考えているいつかは、女に飽きっぽくて、本当の愛を知らないモテ系男子。そんないつかが相談を持ち掛けるのがちょっと地味な文系女子のあすな。この冒頭からは、遊び人が女の子の献身で真実の愛に目覚めるストーリーを予想したのですが、結末はまるっきり逆で、主人公は、いつかではなく、あすなと考えた方が良いかも。
子供の頃からずっと椿とつき合い続けている秀人の冷静さ・老成ぶりは、『古典部シリーズ』(米澤穂信) *5の敏志に似ていますが、秀人の方がひねていない感じ。伊原からの求愛を拒み続ける敏志とは人生経験が違う、ということかもしれません。

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