ぐらシャチ

まゆは誕生日にもらったオカリナを首にかけて

オカリナを吹きに浜辺に出た榛奈は、高波に呑まれ溺死しそうになったところを、言葉を喋るシャチに助けられ――少年と少女のファーストコンタクトストーリー。
一般的な常識をわきまえない女の子が事件に巻き込まれて死にそうになった男の子を助けて――の展開では、男が女の行動を誤解することが一つの転機になることが良くありますが、そういう場合って、男の方の思いの至らなさに憤慨したりします。
ところが、この展開の性別を逆にした本作では、榛奈の思いが至らなくて彼の行動を誤解するシーンにも、そりゃそうだよな、の納得感があります。性の差のせいなのか、作者の力量によるものなのか。
最初から最後まで、どことなくこの世界や言葉に慣れていない彼の台詞が好み。少年ドラマシリーズとか往年のソノラマ文庫とかが好きな方に特にお薦め。

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