うらなり

卑怯な待ち駒は正攻法
著:小林信彦 デ:大久保明子 文春文庫*1

あてにならないマドンナを残して転任した《うらなり》も50歳。《山嵐》からの連絡で、銀座に向かうが――坊っちゃん』(夏目漱石) *2から30年、明治から昭和まで生きた英語教師の肖像。
ハムレット』(シェークスピア/久生十蘭) *3の翻案だと知らずに『ハムレット・シンドローム』(樺山三英) *4を読んだ後、本書を手に取ったんですが、著者による「創作ノート」が『ハムレット』の端役を主人公にした『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(ストッパード) *5に触れていて、なんかちょっとした偶然を感じたり。
解説や創作ノートでは、戯画的で読者にタイプがすぐにわかる「フラット(平面的)キャラクター」と作中で劇的に発展(変化)していく「ラウンド(立体的)キャラクター」が、『小説の諸相』(フォースター) *6を参照して対比されています。前者こそ、データベース参照型のキャラクター、なのかな。
原作でのうらなりの記述がかなり少ない、ということにも驚きましたが、本作でのうらなりの行動は、原作からイメージしていたうらなり通り、という感じなのにも驚き。お勧め。

><