平井骸惚此中ニ有リ/〃 其貳

yomimaru2004-09-27

落語とか都々逸とかに似たような感じの、ちょっと変わった文体の大正ミステリーシリーズ。泉鏡花にもこんな文体があったような気が。江戸川乱歩がデビューした頃を舞台にしています。探偵小説年表とかを参照しながら読むとなお良いかも。
科学捜査のない頃の話で事件そのものは単純なのですが、当時流行した雑誌や新聞の記事を引くことで猟奇風味を増しているのが好印象。やり過ぎると「一生懸命調べました」がにおってきてしまうところ、本作では、当時の風俗が嫌味でなくうまく融合されています。もしかしたら、ミステリ右翼(「ー」がないことが重要!)には許せない部分があるのかもしれませんけど……
頼りない書生の河上くん、1巻ではコロッケを披露しますが、男でも抵抗なく料理できる、というところは好きです。ちょっと影の薄い潑子(はつこ)の「兄様(あにさま)」という呼び方は陰微でいいですね。
来月3巻が出るので、まだ読んでない方は早目に予習して、文体に慣れておくのがお勧め。