太陽の簒奪者
水星から突如吹き上げられた土壌が太陽を中心とするリングを形成、地球では日照量が減少して人類は滅亡の危機に。一体何者がこのリングを作ったのか――第34回星雲賞受賞作。
野尻抱介というと、富士見ファンタジア文庫版のヴェイスの盲点―クレギオン*2やロケットガール*3の印象があまりに強いので、本作のヒロイン白石亜紀には少々驚きました。もっとも、女性を主人公にもってくるあたりは、いつも通りなのかも。
子供の頃に読んだファーストコンタクトモノに、猫型宇宙人と人間が飼っていた猿が手話で会話するという話があります。徳間文庫コスモス版かソノラマ文庫か秋元文庫か、もはや記憶もあやふやなんですが、本作を読んだときも、空の中(有川浩)*4を読んだときにも、この「曖昧な記憶の本」が懐しく思い出されました。
高校時代に天文部で水星からの噴出を観測したことがきっかけで生き方が決まった主人公亜紀もそうですが、多感な時期に刷り込まれた感情は、いつまでたっても消え去らないものなのですね。
本作のビックリ感って、初めてC++で演算子オーバーロードを知ったとき*5とか、sedの正規表現で\1, \2, …を知ったとき*6とかのドキドキ感に似てますね。
ロケットガールシリーズ、ハヤカワ文庫JAで出し直してついでに新作も出ないかな。もちろんむっちりむうにいの表紙で。