掌の中の小鳥

yomimaru2005-04-09

bk1

小粋なカクテルの店〈エッグ・スタンド〉で繰り広げられる不思議な話とその解決。交際を始めたカップルに、美人のバーテンダー、恰幅の良い紳士の間で絡み合う謎は、いつしか一枚の物語を紡ぎ出して――恋愛ミステリー。
同じ著者のななつのこ*2や魔法飛行*3では女子大生が主人公でしたが、本作ではもっと「大人」の女性がヒロインになっています。女性である著者が「自分が男だったら確実に惚れちゃってたに違いない女の子」との設定で描かれている彼女と、空飛ぶ馬(北村薫)*4の女子大生ヒロインに見られるような男から見た女の子のある種の理想像とを対比すると、やっぱり感じ方の性差があるのだなと思わされます。
春期限定いちごタルト事件(米澤穂信)*5もそうですが、短篇連作が連なった一つの物語には、冷静に考えるととんでもない偶然の積み重ねで成立していることが良くあります。それでも、そういう作者の恣意なんてものは小さなこと、と思わせるだけのパワーが本作にもあります。
蘊蓄のかわりにミステリーが入ったBAR レモン・ハート(古谷三敏)*6 *7って感じもちょっとします。