憂鬱アンドロイド

yomimaru2005-05-11

bk1
著:真嶋麿言 画:珈琲 電撃文庫*1

自分をアンドロイドだと信じ込んでいる純真で変人な正機と、彼を想う茜。彼が正真正銘の人間であることを誰よりも知る彼女の憂鬱な日々がまた始まる――第11回電撃小説大賞最終選考作。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(フィリップ・K・ディック) *2ポストガール(増子二郎) *3、僕らA.I.(川上亮) *4同様自分が人間なのかアンドロイドなのかを問う作品ですが、基本的には正機を見る周囲の視点で描かれている点が秀逸です。
悲しみや怒りという感情を失った正機の姿には、カレとカノジョと召喚魔法(上月司) *5の緊張と恐怖という感情を失った遊矢に似た寂しい明るさの雰囲気があります。その真実を知っているのが感情を失った本人か、その隣りにいつもいる人間か、というだけで、こんなにも展開が変わるのには驚き。
茜視点の衝撃的なラスト「憂鬱アンドロイド」二人の友人洋太視点のピュアラブストーリー「夏と子犬と片思い」街で出会った知人視点の応援系「スマイル」ある事件をきっかけに友達になった千秋視点の回想もの「前略。自殺志願者より」の全四話構成になっています。正機視点の話はナシのままで、二人が周囲にふりまく波紋を描くシリーズ連作にならないかな。