近代能楽集

近代能楽集 (新潮文庫)

時間と空間の飛躍をものともしない能楽という古典の主題を再現する現代劇の戯曲八篇。蜷川幸雄演出の舞台の予習のつもりで。「能楽」とはいいつつも古文ではなく、ポランの広場(宮沢賢治) *2父帰る(菊池寛) *3同様、至って普通に読める短篇です。
原典の謡曲*4と本作とを対比すると、テーマが抽出されているほかは激しく換骨奪胎されていて、その違いの度合は、キャラ配置と主題「○○は友達、何も悪いことしてない」がかなり共通する風の谷のナウシカ(宮崎駿)*5アンダカの怪造学(日日日)*6でもストーリー展開が結構違う、というのと似ているかも。
入院中の妻 葵を見舞う夫 若林光と彼と過去に関係のあった年上の女 六条康子の愛憎劇「葵上」は、原典*7よりも身につまされます。