夜のピクニック

夜のピクニック

二日間ひたすら徒歩行軍の「歩行祭」。貴子は同級生融に対して賭けに出ることを決心するが、アメリカに転校したクラスメイトから二人に宛てられた伝言の秘密とは――永遠不変の青春小説
第2回本屋大賞受賞作で、冒頭のあらすじをそこかしこで見てはいたので、勝手にスタンド・バイ・ミー(スティーブン・キング)*2の雰囲気と思っていたのですが、死体が出ないところが違います。言ってみれば、インジャン・ジョーが出ないトム・ソーヤーの冒険(マーク・トウェイン)*3、小夜子が出なくて恐くない六番目の小夜子(恩田陸)*4の感じ。
キャラ同士の関係性と舞台設定を整理し尽くしたが故の勝利。登場人物全員が同じ行動をする「歩行祭」という点で、たとえば文化祭前夜よりもシンプルな世界設定が、融や貴子達の心の変化をより浮き彫りにしている気がします。
ちょっと賢くてきちんとした日本口語を喋る高校生たちの会話に、こうありたかった(ありたい)自分の高校時代を感じるところが、存在しない故郷へのノスタルジーをかき立てるのかもしれません。恋愛分は低いのですが、恋する女たち(氷室冴子)*5や三月、七日(森橋ビンゴ)*6が好きな方にお薦め。