10月はSPAMで満ちている

yomimaru2005-09-22

bk1
著:桜坂洋 画:岩清水さやか 小説新潮2005年10月号*1

物書きになりたいぼくは、文章書きの仕事場の秋葉原の老朽ビルで秘密めいた女性に出会った。彼女の名前は、坂崎嘉穂――アキバと猫とあやしい缶ジュース、桜坂洋の期待の新作。
コンピュータ業界出身の作者だけに、業界描写では地に足のついている部分と嘘の部分とが巧みに切り分けられており、文学誌にも馴染む〈リアル〉な世界観の中で、二十代半ばに成長してもエキセンリックな嘉穂の仕草が引き立てられています。
ある意味どうでも良い謎に挑む〈ぼく〉の姿には、なぜか、短篇「肉か魚か食い物」や「な、なつのこ」掲載の〈日常には“本格”がこんなにも溢れている!!」〉猫丸先輩の空論*2を思い出しました。ワトソン役が文章好きの場合、女性だとななつのこ(加納朋子)*3や空飛ぶ馬(北村薫)*4のように本読みというのは好みなんですが、男性の場合は物書き予備軍の〈ぼく〉のようにちょっと挫折している方がしっくりくるのはなぜなのか。
ちょっとした複数の謎と猫とソーセージとSPAM(缶詰)とspam(迷惑メール)が収束する結末の爽快感、よくわかる現代魔法ファンにも大サービスの本作、絶対のお薦め!
冒頭の試し読み (新潮社サイト 2005年9月22日現在)
感想リンク集