十兵衛両断

yomimaru2005-10-20

bk1

柳生十兵衛は三度死ぬ。朝鮮から柳生家を訪れた孫文或の狙いは、剣の達人 十兵衛だった――新陰流を襲う陰謀渦巻く連作短篇集。
007は二度死ぬ(フレミング) *2では、英国のスパイ ジェームズ・ボンドが日本に忍び込むわけですが、本作では朝鮮からのスパイが。秀吉から家康にかけての日本と朝鮮との関係が、全篇を貫く重要な鍵になっており、双方それぞれの国内での対立も絡み、善悪が単純に決められないところ、実に素晴らしい。
柳生一族の陰謀*3魔界転生(山田風太郎) *4十兵衛ちゃん ラブリー眼帯の秘密*5など、柳生ものはかなり好き。柳生新陰流流祖の石舟斎が、孫十兵衛の天賦の才を見て、いつしか彼との真剣勝負を望むように……という展開が好きなのかもしれません。
十兵衛ちゃん 2 *6ではシベリア柳生が出てきますが、本作では朝鮮柳生が登場。爆撃聖徳太子(町井登志夫) *7のような度を外れた展開と、硬質な文章の取り合わせが気に入りました。