夏のロケット

yomimaru2005-11-01

bk1
著:川端裕人 画:木内達朗 文春文庫*1

天文部ロケット班を卒業し、ミュージシャンとして功成り名を遂げた氷川は、音楽への熱情を失いつつあった。そんな彼を、ロケット打ち上げに対する妄執が襲う――第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞作。
小学生が宇宙を目指すなつのロケット(あさりよしとお) *2、見かけは高校生(設定上は大学生以上)が宇宙を目指すロケットの夏*3とは違って、こちらは社会人になってふと自分の人生を振り返る歳になったおじさん達が、子供の頃の熱情に襲われる話。
夢を掘りあてた人―トロイアを発掘したシュリーマン(ヨハンナ・インゲ・フォン・ヴィーゼ)*4同様に、成功した氷川の出資で夢を追う彼らですが、目的と手段が、氷川とシュリーマンとは逆かも。
彼らは彼らなりに行き詰まってはいるのですが、60歳超の老人が宇宙を目指すスペースカウボーイ*5ほどには、自己評価と周囲評価のギャップも大きくないし、駄目駄目になっていないところが、〈楽園〉ちっくです。
夏の暑さを感じさせるようなむせかえる蘊蓄は楽しめましたが、ミステリー風味はかなり薄めで、ロケットガール(野尻抱介) *6よりも宇宙へのパスポート(笹本祐一) *7が好きな人向けかもしれません。

追記
2005年のロケットボーイズ(五十嵐貴久) *8がんばれ!ベアーズ*9系らしい。ロケットは作らずに人工衛星を作るようですが。読んでみよう。

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