流星ワゴン

yomimaru2005-11-27

bk1

離婚を迫る妻、荒れて引き込もる息子、折合の悪い父はガン、仕事はリストラ、小遣いを貰いに実家に見舞いに行く僕。死んじゃってもいいかなあ……なんて考えていたら、五年前の事故で死んだ橋本父子のワゴンに乗って、時を超え、人生の岐路にもう一度立つことに――本の雑誌」2002年 年間ベスト1、やり直しモノ。
時を超えて同い歳の父「チューさん」と自分の人生の岐路をやり直そうとする僕ことカズなんですが、チューさん(A)とカズ(B)の関係が、カズ(B)とその息子広樹(C)との関係と重ね合わせになっているだけで十分好きなA:B=B:C構造なのに、もう一つおまけに橋本父とその子健太の関係まで重畳されていて、親の心子知らず、子の心親知らず、が自然に実感させられる構成、巧み。
歴史が動いたその時に、橋本父子に導かれて、嫌でも見ることになる幸せっぽい生活の裏側。果たしてやり直しはできるのか。
設定的には夏への扉(ハインライン)*2やバック・トゥー・ザ・フューチャー*3よくわかる現代魔法ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ(桜坂洋) *4よりもさらにちょっとだけ歴史が改竄できるだけで、一回だけシミュレーションをやり直せる第四間氷期(安部公房)*5といった感じですが、それ自体はあまり重要視されていなくて、死を受容しかけた僕の、無意識に察知した真実を見た夢といっても良いかも。
講談社ノベルス富士見ミステリー文庫あたりでこのキャラ配置と構成に準同形の作品が出ないかなあ。

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