リオノーラの肖像

yomimaru2006-05-04

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著:ロバート・ゴダード 訳:加地美知子 画:杉本典已 文春文庫*1

ソンムの会戦で死んだ父、産褥で亡くなった母、自分を引き取った館の主人オリヴィア、そして、館で起きた殺人事件。自身の生まれと育ちに纏わる謎に、レオノーラは――ゴシック・ミステリーの巨大万華鏡。
70歳になったリオノーラが娘に語りかける形式で始まる本作は、語り部が順次変わっていき、次第に謎が紐解かれる形式。語りの《主観》で登場人物の印象が大きく変わる白夜行(東野圭吾) *2や悪女について(有吉佐和子) *3とは異なり、キャラの印象にあまり揺らぎはないのですが、かえってそれ故にうまくミスリードされました。
戦争の当事国国民とそうでない国の国民との差や貴族とそうでない者の差が如実に効いてくる世界観には、イギリスでゴシックで貴族でメイドで、という設定に単純に喜んではいられない重苦しさもありますが、リオノーラの行動力が爽快。お勧め。

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