スタジアム 虹の事件簿

yomimaru2007-01-04

bk1
著:青井夏海 画:ムラタユキトシ 創元推理文庫*1

万年最下位の東海レインボーズの新オーナー多佳子は、野球のルールもわからない素人。それでも球団の試合を見守る彼女が球場で受ける試合の説明は、不審な事件と何故か符合して――自費出版のMBC21*2出身の本格ミステリ
説明せりふを物語に馴染ませるテクニックの一つに、主要キャラを素人と専門家の二人にして、前者に後者が説明する、という手法がありますが、本作もこの手を使って野球のルールを説明しています。ただ、この説明が野球の説明にとどまらず、裏で発生している殺人事件の真相を示唆しているところが本作の特徴。
このため、ミステリから野球に近付くことも、野球からミステリに近付くこともできるような、二面作戦がとれています。
多佳子が、丸っきり素人駄目人間から、超洞察力のできる人間に、ぱっと変身するところは、《名探偵の非常識》に則っています。もっとも、その《非常識》が現実的に感じられるのは、野球オンチの存在というものを実感として知っているからでしょう。
殺人事件そのものは球場には出てこないので、雰囲気は何故か日常ミステリっぽくなっています。スポーツものが好きな方にお薦め。

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