ハルさん

yomimaru2007-03-15

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娘ふうちゃんが心配でたまらない男やもめ人形作家ハルさんの脳裏に浮かぶのは、亡くなった妻 瑠璃子さんの謎解きの言葉――娘の成長と対比される父親の頼りなさほのぼのミステリー。
ふうちゃんの結婚式に出席するハルさんが彼女の成長の過程を回想する5つの日常ミステリ短篇集。ふうちゃんとハルさんは、Papa told me(榛野なな恵) *2系の聞き分けの良い娘と、だからパパには敵わない(遠藤淑子) *3系の情けない父の組み合わせという感じ。
ハルさんには、コッペリア(加納朋子) *4や麗しのシャーロットに捧ぐ(尾関修一) *5に見られるような狂気のかけらも見られません。
脳内亡妻を探偵に頼りない助手として脳内で会話するハルさんの風景は、一見ほのぼのしているかのように思えますが、考え直してみれば、人形はこたつで推理する(我孫子武丸) *6の人形鞠夫と腹話術師朝永の関係と同じで、やっぱりどこか……気弱な情けない男っぷりも、ハルさんと朝永とで共通します。
謎が解決しても、それがまったく日常生活の上で役に立たないところが印象的。なんでそんなことまで気になるのっていう《心配のし過ぎ》が日常系ミステリの本道なのかも、なんて思いました。

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