どれくらいの愛情

yomimaru2007-05-02

bk1

正平を騙して去った晶からの五年ぶりの電話は「別れてから街で100回すれ違った」記念だという。いや、その回数は128回のはずだ――表題作を含む全四篇、一緒にいるから好きになる恋愛小説集。
パチンコ屋前で綾波やアスカの幟を見るたびに、父に売り飛ばされた娘を見たときのような、どこかもやもやした思いが浮かんでいたんですが、本書を読んでそれが晴れたような気がします。
セカイを守るために戦う戦闘美少女も、親の借金のせいで働く水商売の女性も、自分のせいじゃない理不尽な環境に絡め取られ、不幸に慣れていて、幸せを諦めることを知っている。
そんなことを考えて、イリヤの空UFOの夏(秋山瑞人) *2の伊里野の形見のエピソードや浅羽宛の最後の手紙を思い出しながら読み返すと、晶を見る正平の姿に、セカイ系の主人公が重なるような気すらしてきます。
もっとも、本書のモチーフはどれも、触れ合っているから好きでいられる系で、ほしのこえ(新海誠) *3とは逆(?)。ここから生じる展開や結末の相違を見るのも読み処の一つかも的お薦め。

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