葉桜の季節に君を想うということ

テレクラで引っ掛けた女を淫売と罵しりつつもプラトニックな恋を求める将虎は、電車に飛び込もうとしたさくらを押し止めたことがきっかけで――老人相手にアルカリなんとか水をペットボトル1本2万円で売る霊感商法、その裏側を刔る究極の現代ミステリ。
ミステリ小説では素頓狂な名前が並んでも、何ら違和感を感じなくなってしまった私ですが、本作の主要登場人物には、さくら、愛子、綾乃、キヨシと、ごく普通の名前が続きます。将虎はちょっと異質ですが、妹の綾乃による呼び名は「トラちゃん」。こうなると地味っぽさが増してきます。
著者の調査資料が補遺に掲載されていますが、単行本発行の2003年当時のURLのほとんどがリンク切れになっている、という現実に、年月の流れの速さを感じました。permalinkは本当にpermanentなのか、十年後が気になります。
出会い系サイトで知りあった女の子と行くランチが、値段も味も量もどっしり系の今はなきタイユバン・ロブションなんてところ、将虎の行動には、こちらの予想を超える意外性がありますが、最終的には、これもまた納得のいく伏線になっています。お薦め。

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