佐藤さん

著:片川優子 画:イナキヨシコ 講談社文庫*1

僕は隣の席の佐藤さんが怖い。彼女に憑いているアレが見えるのは、僕だけだから――気弱な僕の霊視ファンタジー、第44回講談社児童文学新人賞入選作。
児童文学に分類される一人称小説は、大人が子供のふりをしている気配を感じることがあるんですが、本作執筆時 作者は中学三年生(!)なので、そんな気配は微塵もなし。かりにライトノベルレーベルで出版されていたとしても、しっくり馴染んで違和感はないかも。
とにかく弱気で自分に自信がない霊視能力者《僕》こと佐伯、いつも幽霊に取り憑かれているけど見えない佐藤さん、押しの強さが《僕》に苦手意識を与える志村、この三人のキャラ配置は、1+1=0(桑田乃梨子) *2にそっくり。実は霊視モノの王道なのかもしれません。キャラが自分で自力解決しなきゃいけないって展開がいいです。
登場人物がいつも最初は、《僕》にとって嫌な奴、《僕》が苦手な相手として登場するところが特色。次々とキャラを攻略する(攻略される)かのようなテンポの良さです。そう言えば、ちょっとだけ出てくる妹 百華や弟 翔太の一言も、ギャルゲーの助言キャラっぽい。
激ニブなラブコメ男じゃなくて、自分に自信がないがゆえに好意を素直に解釈できないオトコノコ。そのじれったさを「志村志村! そこそこ!」モードで楽しめる一作。お薦め。