赤石沢教室の実験

芸術家養成高校で特権的な地位を持つ赤石沢教室のメンバーと交渉を持った理事長の孫 片桐あゆみは、兄の自殺の真相を知り、抑えられない感情に――サイコでホラーで本格なぎっしりミステリ。
あゆみを見る《僕》による二人称形式のパートと夭逝した芸術家 赤石沢が自身の歴史を語るパートの二つが登場する形式で、ドグラマグラ(夢野久作) *2的に登場人物の語りに対する《不信》が掻き立てられます。どれが嘘でどれが本当でどれが登場人物の誤解なのかと悩みながら読みましたが、最終的にはきちんとミステリーに落ち着くところが凄い。
あゆみとその友達の深雪、藍子の三人の日常会話の方が、平井骸惚シリーズ(田代裕彦) *3やキリサキシリーズ(田代裕彦) *4よりも、一層自然にLOVE寄せされている感じがするのがちょっと不思議。ラノベで培ったキャラクターに対する描写が、一般向け世界設定に組み合わされると映える、ということなのかも。
講談社ノベルズでイラスト表紙系の印象もある一冊ですが、ミステリフロンティアを買うつもりでどうぞ。お薦め。

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