小袖日記

不倫相手の別れ話に深夜の公園へ飛び出したわたしが目を覚ますと、周りの顔はどれもおかめで麻呂な眉――心だけ平安にタイムスリップの源氏物語ネタ暴露小説
《わたし》の心が入り込んだ女房 小袖がセレブのゴシップをネタとして集め、それを主人の香子が「源氏物語」に仕上げると大胆な設定の本作、出てくるエピソードは、夕顔、末摘花、葵、明石、若紫と、基本中の基本なので安心。
実際にあった話を換骨奪胎して脚色している、とのことなので、どういう真相を隠そうとしているのか、夕顔を殺した真犯人を探る夕顔殺人事件(清水義範) *2とは違った意味で、意外性ある真相が楽しみのキモです。
女ばかりが登場して魅力ある男が一人も出てきません。明石入道が一番イイ男かも? イイ男のいなさ加減は、なんて素敵にジャパネスク(氷室冴子) *3とは歴然と違って、トキメキの恋は全然出てきませんが、同性ばかりの気楽さが感じられて、じめじめどろどろ感はありません。どの話も「何であんな馬鹿な男に」的な同情の視線がまずあるため、女同士の競争があらわにならないからかもしれません。
中でも、明石の真相はミステリちっく、末摘花の真相はエロちっくで、ちょっと予想できない展開でした。筆の力で貴族達をかきまわす様が痛快です。お薦め。

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