数学ガール

数学の謎掛けを仕掛ける眼鏡美少女ミルカさん、数学への熱意で元気一杯に質問してくる天然美少女テトラちゃん、二人と僕の、数の此岸と数の彼岸の旅は始まったばかり――オイラー生誕300年記念の母関数エンタテインメント。
自分を導いてくれる寡黙系同級生と自分を頼りにしてくれる元気系後輩に挟まれた理系少年の《僕》なんですが、知っているのに知らないふりをしているかのような一人称の口調が殺×愛シリーズ(風見周) *2の主人公 密に似てます。“あの人”がミルカ、サクヤがテトラ、と、女の子側の対応もとれている感じ。
そういう意識で見ると、たとえば無限数列を一つの関数に落とし込む母関数のくだりなどは、作者が考案した魔法・世界・ガジェット設定を熱く語る語り口を思わせます。《考案》(空想)ではなくて《発見》(事実)である点が、本作のお得なところかも。
天文部で一人の男を巡る二人の女の子のやりとりを描いた 反目の二連星(桑田乃梨子) *3とちょっと違うのは、学問の実力の順における男の位置で、反目〜では「史貴>後輩由香子>同級生麻子」なのに、本作は「ミルカ>僕>テトラ」。もっとも両作とも、主人公(由香子/僕)が、実力順の真ん中になっていて、これが勉強モノの黄金配置なのかもしれません。
ミルカとテトラの二人が協力して《僕》を攻め立てるsin(x) = x(1-x/π)(1+x/π)(1-x/2π)(1+x/2π)(1-x/3π)(1+x/3π)…の《因数分解》には圧倒されました。数学セミナー*4を貪り読んだ高校生時代、とかが懐しく思い出される一冊。

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