天啓の宴

著:笠井潔 画:斎藤和男 創元推理文庫*1

新人賞受賞作「天啓の宴」が作者により消された謎に迫るスランプ作家 天童、出獄予定の親友のために回想記を綴る一発屋作家 宗像、首切り死体で発見された少女小説家 小松原――作者消失を巡って究極の小説を探る問答ミステリ。
作家を再起不能にする究極の書「天啓の宴」や作家を消失させることを目的とする究極の小説を巡る対話が妙にオタクの議論的で面白い。幻詩狩り(川又千秋) *2の「幻詩」や食前絶後!!(ろくごまるに) *3の「ディレルの書」など、人の心を汚染し改造し侵す小説をテーマにした小説って、「本文」そのものを読むことができないせいか、初期値が与えられていない再帰関数とか、自分自身を出力するプログラムとか、のようで、ちょっともどかしい。
各章ごとに視点が変わる文章は、どこからどこまでが誰の書いたものなのかわからなくなるところは、ミステリとホラーの差はあるものの、作者本人や出版社本人まで登場してしまう X雨(沙藤一樹) *4に似た感じです。
「究極の小説を描く小説」であっても、究極の小説そのものに注目するか、それとも、小説伝(小林恭二) *5のようにその小説に踊らされる人々に着目するか、で、大分印象が違うところに興味を惹かれました。

><