天使の歌声

著:北川歩実 画:佐久間真人 創元推理文庫*1

未婚の母が亡くなり父方の祖母に引き取られた僕は、弟 有也が発する天使の歌声に魅入られるが、この歌声は彼の言語能力と引き換えに得られたものだ、と主治医 黒井は言い――インコは言葉を喋るのか表題作を含む、家族と血の絆をめぐる六篇。
インコのビーが人真似で「ありがとう」と聞こえる音声を発するのを聞いた小学生の僕が有也の言語能力を開花させるべく尽力した結果のお披露目シーンが特筆モノ。言葉を喋るとは何か、言葉って何か、意味と記号が結び付くのか、それとも解釈する人あってこそのものなのか、記号論における二つの立場の対立の縮図を感じました。
六篇の中には、最初に犯人じゃないかと疑われるAは、Bのために嘘をついていて、やっぱりAとBは絆で結ばれているパターンと、これをさらにどんでん返しにして、AとBの絆は崩壊しているパターンの両方があって、短いながらもどちらに落ち着くのかジェットコースター的、というか、24―TWENTY FOUR―第1シーズン*2的、というか、容疑者の多重どんでん返しにドキドキしながら読み進むことができました。

><