マジカル・ドロップス

著:風野潮 写:DYSK 光文社*1

タイムカプセルに真由美が遺した飴玉は、42歳の私の姿を2時間17分だけ15歳の姿に戻してくれる。なんちゃって女子高生制服を着てカラオケ大会に参加した私は、ボーカル募集中のバンドに目を付けられ――子供に逆変身するハートフルファンタジー
女の子がキャンディーを食べて年齢を10歳変化させる ふしぎなメルモ(手塚治虫) *2に似た設定の本作ですが、様々な年齢の状況、特に大人の心と体の神秘を知得するメルモに対して、本作は、子供に対峙する母親としての現在に、中高生だったあの頃の自分の感情をよみがえらせる思い出し系ストーリー。
息子はバンドに明け暮れ、娘は何やら怪しいイベントに行き、に不安を募らせる母親が、自分が中高生になってみると、何てことない、自分もそうじゃん、と、思えるようになる。今の若いヤツは…なんて言ってる人は、単に若いヤツのやってることを知らないだけ、その境遇でやってみればちゃんと馴染める、のかもしれません。
十年前、二十年前の自分に戻れたら何をするか、という問いは、今の記憶を持ったまま昔の自分の体内にタイムスリップすることを前提にしていた自分に気付きました。今の記憶のまま自分が単に若返るというやり方もありなんですね。
ステレオタイプな嫌味生活指導系の先生に呼び出しを喰らって母娘で三者面談するシーンが爽快。15歳と42歳を往復するうちに、ヒロインがなんだか可愛い女(の子)にだんだん見えてくる感覚がいいです。お薦め。

><