クロスカウンター

著:井上尚登 画:赤津美和子 光文社*1

出資詐欺事件の余波で証券会社を追われた元アナリスト恵子は、フリーの金融探偵として繰り返す潜入調査の中、因縁の詐欺師 平川の姿が垣間見え――詐欺と騙しがぶつかるコン・ゲームミステリー。
ナノテクノロジーで上場を目指すSEIUN、中国本土で日本の書物の合弁出版を目論む華想集団、アルカリプラズマ活性水で急成長するバイオライフ社と、比較的スマートな詐欺が仕掛けられる冒頭3話、平川の行動が少し変わる第4話、そして急転直下のエピローグ。
恵子の助手として働く熱狂的サッカーファンの浩二郎は、イケ面なのにデートでサッカーを見に行って、女の子そっちのけで試合に熱中しちゃうタイプ。本作では、何故かいつも日本が負けていてボヤきが入るんですが、考えてみれば、贔屓チームの勝ちで躁状態の情報屋って、どこか雰囲気が間違ってる感じですね。
コン・ゲームとはいいつつも、詐欺にがっぷり四つでやり返すのではなく、百万ドルをとり返せ!(ジェフリー・アーチャー) *2的な捻りが加わっています。エピローグでは、さらに、倒叙モノと犯人宛ての不思議な結合のような楽しさです。お薦め。

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