死神姫の再婚

著:小野上明夜 画:岸田メル B's-LOG文庫*1

結納金目当ての結婚式で新郎が殺された没落貴族の一人娘アリシアは、剛腕で成り上がりの強公爵ライセンの元に嫁ぐことになるが、ホラー好みで現金な彼女は趣味の悪い彼の城と力と金にモノを言わせる態度が気に入って――天然メガネっ娘の白い結婚コメディ、第9回えんため大賞ガールズ部門奨励賞、第1回B's-LOG文庫新人賞優秀賞受賞作。
同じく貧乏ながらもそれなりにたくましく生きる『王子に捧げる竜退治』(野梨原花南) *2のヒロイン ドリーと比べると、アリシアの天然ぶり、呑気ぶりが極立つ本作。メイドや料理番に無視されたり苛められたりしても、「そういうものなのね」と客観的に見て、今は十分に幸せと心から思えるあたりは、借金苦の女性化学者が道楽金持ちに嫁ぐ「灰色のシンデレラ」/『桃色浪漫3』(名香智子) *3と共通しています。
ライセンの愛人メイド ノーラが仕掛ける《妻》の座を巡る争いを、柳に風とノーガード戦法で受け流すアリシア。ところがその様子が、ノーラにとっては、海千山千の強者に見える、という辺りのギャップが面白い。
「灰色〜」のヒロインは化学を生かした調合(調理)の技の持ち主ですが、アリシアもまた、ホラー趣味に自炊で無意識に体が動きます。好きこそものの上手なれ的な得意技を持っていればこその楽しい展開がお薦め。

><