闇が落ちる前に、もう一度

著:山本弘 画:李夏紀 角川文庫*1

宇宙物理研究者の僕は、理論検証のために行った実験から宇宙の寿命はあと17日と知って、モンゴルへ化石発掘調査に出かけている恋人 萌衣にメールを書くが――表題作を含む全5篇の、愚直なSF短篇集。
滅亡までの日が限られた状況で何をするかを描く表題作は、大学で研究を進める理系の男が主人公なんですが、すでに親密な仲になっている女の子に対する行動がいかにも、「筑波の恋」/『蕎麦ときしめん』(清水義範) *2に描かれるような《女を前にあと一歩が踏み出せない理系の大学院生》って感じで、同じ状況下の女の子の行動力を描く『ひとめあなたに…』(新井素子) *3とは大違い。
たとえこういう悲劇的な状況であっても、いや、こういう袋小路の状況だからこそ、やるべきことがあるだろう、すぐにモンゴルへ飛べ、と突込みたくなっちゃうんですがどうか。
『涼宮ハルヒの憂鬱』(谷川流) *4にも出てくる世界五分前仮説に興味のある方は是非どうぞ。

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