仁侠学園

著:今野敏 画:浦崎安臣 実業之日本社*1

昔気質のヤクザ阿岐本組の代貸 日村は、数ある義理から私立高校の再建を引き受けたオヤジの命で、理事として荒れた学校の面倒を見ることになり――生徒も舎弟も一緒くたの仁侠再建物語。
荒れた高校と鼻つまみ者のヤクザが組んでの『フル・モンティ*2式のサクセスストーリーかと予想していたんですが、日村達は確かに、新しい住人からは敬遠されているものの、商店街の普通の店にも昔馴染がいて、貧しいながらも楽しい毎日。『セーラー服と機関銃』(赤川次郎) *3の目高組とは違って、駄目ヤクザという感じではありません。
暴対法の対象にも掲げられないほどちっぽけな阿岐本組ですが、交わした盃の数が並ではないのか、この歳まで死なずに生き延びればそういう数になるのか、とにかくオヤジの気配り目配りが光ります。
軍隊にせよ警察にせよヤクザにせよ、ある種の《暴力》を背景にした組織の中では、それを振るうか否かにかかわらず、いつでも振るえるぞ、という精神的余裕のせいで、「褒めて伸ばす」とか、ちょっとした「ありがとう」とか、がより一層効くのかもしれません。飴とムチのギャップというか。
堅気に迷惑をかけず社会の片隅でひっそり生きる組の構成員にもハッカーがいて、しかも彼の作業は《検索くん》と実に地味。この地味さ加減が妙にリアルで唸りました。人情噺が好きな方にお薦め。

><